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高齢者の入浴中の事故を防ぐ方法

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不慮の事故は65歳以上の高齢者では家庭内での事故が最も多いと言われています。

特に元気な高齢者は、自宅内で家族が常に見守っていることは少ないため、思わぬ事故に合うことも。

今回は高齢者の家庭内事故の特徴や防ぐ方法についてお伝えします。

高齢者の不慮の事故による死因

2019年(令和1年)の調査によると、65歳以上の不慮の事故による死因は「転倒・転落・墜落」が最も多く、次いで「窒息」、「溺死及び溺水」と続きます。

2019年人口動態調査「不慮の事故による死因」より作成

家庭における主な不慮の事故による死因

続いて高齢者の家庭内での事故について見ていきましょう。

2019年人口動態調査「家庭内における不慮の事故による死因」より作成

自宅では「溺死及び溺水」が圧倒的に多く、次いで「窒息」、「転倒・転落・墜落」の順になっています。

また溺死および溺水の中で入浴中の事故は約7割にのぼることがわかっています。

入浴中の事故の原因

家庭内における不慮の事故による死因で最も多い入浴中の事故。

どうすれば防ぐことができるのでしょうか。

入浴中に起こる事故の原因としては以下のようなものが考えられます。

  • 入浴中の血圧の変化によるヒートショック
  • 浴槽内での転倒
  • 高温または長時間の入浴による「のぼせ」と「脱水」
  • 食事の直後や飲酒後の入浴

入浴中の血圧の変化によるヒートショック

東京消防庁 STOP!高齢者の「おぼれる」事故より

入浴中は普段の生活の中でも血圧の変動が多い時間と言えます。
特に冬期間は居間と浴室の温度差が大きくなりやすく、血管が収縮して血圧が上がります。
そして湯船につかると、収縮していた血管が広がって血圧が下がります。

寒いトイレでも同じようなことが起こる可能性があります。
この急激な血圧の変動が心臓に負担をかけ、心筋梗塞脳卒中を引き起こすことがあるのです。

浴槽内での転倒

高齢になると膝や腰に痛みがあったり、足の筋力が弱ったりすることで転びやすくなります。

特に浴室内は滑りやすく、浴槽内で転倒することも。

転倒してもすぐに起き上がることができれば良いですが、掴まるところがなかったり、パニックになって体勢を立て直すことができない可能性もあります。

高温または長時間の入浴による「のぼせ」と「脱水」

高齢者では熱いお風呂を好む方もいますが、先ほどのヒートショック同様、高温のお湯や長時間入浴すると「のぼせ」や「脱水」が起こりやすくなります。

この「のぼせ」や「脱水」によって意識が朦朧(もうろう)となり、思うように体を動かす事ができなくなる場合があります。

食事の直後や飲酒後の入浴

食事の直後は消化のために胃などの消化器に血液が集まりやすくなっています。

食事をした後に休息を取らずに入浴すると、「食後低血圧」を起こす可能性があります。

入浴後4~5分で血圧が5~30%低下したという報告もあり、さらに食後低血圧を起こすことで意識がなくなったり、脳貧血、不整脈、心臓発作を起こすリスクが高くなります。

飲酒についても同様で、飲酒後は血流が良くなって血圧が下がります。入浴によってさらに血圧が低下する可能性があります。

また飲酒後に入浴するとさらにアルコールがまわり、さらに酔っぱらってバランスを崩し転倒の危険も出てきます。

入浴中の事故を防ぐ方法

入浴中の事故を防ぐためには、上記のような原因を取り除くことが大切です。

具体的には以下のような対策を取りましょう。

  • 脱衣室や浴室内を暖めておく
  • 洗い場や浴槽の床にスノコや滑り止めマットを設置する
  • 浴槽の温度は40℃前後のぬるま湯に入り、長湯をしない
  • 体調の悪いとき、食直後、飲酒後は入浴しない
  • 入浴中にこまめに安否確認や緊急通報システムを導入する
  • 浴槽を出るときはゆっくり立ち上がる
  • 入浴の前後に水分を取る
  • 基礎疾患(高血圧症や心臓病、脳卒中の既往がある方など)がある人はさらに注意を

脱衣室や浴室内を暖めておく

急激な温度変化を避けるために、入浴前には脱衣室や浴室内を暖めておきましょう。

脱衣室やトイレには電気ヒーターなどの暖房器具を置き、浴室内は温かいシャワーを流しておくと暖めることができます。

洗い場や浴槽の床にスノコや滑り止めマットを設置する

浴室内の洗い場の床が冷たい場合にはスノコやマットを置くと快適に。

また浴槽内で滑って転倒するのを予防するために、浴槽内にも滑り止めマットを置くと安心して入浴できます。

お湯の温度は40℃前後のぬるま湯に入り、長湯をしない

お風呂の温度は40℃前後のぬるま湯に入るようにしましょう。

熱いお湯や長湯は「のぼせ」や「脱水」の原因になりますので、お湯につかる時間は10分以内が良いと言われています。

体調の悪いとき、食直後、飲酒後は入浴しない

入浴する時には無理をせず、見送るか短時間のシャワーだけにしましょう。

食後30分は空けて、飲酒後の入浴は避けましょう。

入浴中にこまめに安否確認や緊急通報システムを導入する

家族と一緒に住んでいる場合には、入浴前に家族へ声をかけてから入るようにしましょう。

高齢者が入浴している間はこまめに声をかけたり、時々様子を確認すると安心です。

一人暮らしの場合には、電話やメールなどで離れている家族へ知らせるか、浴室内に緊急通報システムを設置すれば、いざという時に役立ちます。

浴槽を出るときはゆっくり立ち上がる

浴槽から立ち上がる時に、水圧から体が解放されることで一気に血管が広がり、めまいや立ちくらみを起こすことがあります。

浴槽から出る時には急に立ち上がらず、手すりや浴槽の縁につかまり、頭を低くしてゆっくりと立ちましょう。

浴槽の縁にバスボードなどがあれば、一旦腰掛けることができるのでより安心です。

入浴の前後に水分を取る

入浴中は身体が温まり、汗が出てくることで水分が失われていきます。

入浴前後にはコップ1杯の水分を取るようにして、脱水を予防しましょう。

基礎疾患(高血圧症や心臓病、脳卒中の既往がある方など)がある人はさらに注意を

入浴関連の突然死の研究では、死因の半分以上が心血管系疾患という結果が出ています。

高血圧症や心臓病、脳卒中の既往があるといった場合には、より注意して入浴することが大切です。

まとめ

今回は高齢者の入浴中の事故原因と防ぐための方法をお伝えしました。

高齢になると熱い、冷たいといった温度感覚や自分の体調変化に気づきにくくなります。
また心臓や脳血管系の病気を持っている方も多く、入浴による事故リスクが高い場合も。

自身で気を付けることが難しそうであれば、家族など周りの人がサポートしてあげる必要があります。

これらの予防方法を実践して、高齢者の入浴中の事故を防げたらと思います。