さえとも保健師のブログ

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高齢者の帯状疱疹はワクチンで予防しよう! 

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帯状疱疹にかかる高齢者の数は60歳以上では100人に1人と言われています。 
免疫力の低下する年代では帯状疱疹にかかりやすく、神経痛などの後遺症が続く人も。 

実は帯状疱疹を予防するためのワクチンがあることをご存知でしょうか。 

今回は帯状疱疹とワクチンの効果についてお伝えします。 

帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは 

帯状疱疹の原因は水ぼうそうと同じウイルスです。 

子どもの頃に水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスに感染すると水ぼうそうになります。 
そして水ぼうそうが治った後、ウイルスは脊髄から出る神経節という部分に潜んで静かになります。 

ところが、過度の疲労やストレス、加齢などが原因で免疫力が低下すると、水痘・帯状疱疹のウイルスが活動を再開。 

ウイルスは神経の流れに沿って神経節から皮膚へ移動し、痛みの伴う発疹(ほっしん)が出ます。 
これが帯状疱疹です。 

帯状疱疹の原因 

体の免疫力は疲労やストレス、加齢などによって低下します。 

健康な時には水痘・帯状疱疹ウイルスの活動は抑えられていますが、免疫力が低下した時に活動を再開し、増殖することで帯状疱疹を発症すると考えられています。 

日本人の9割がこのウイルスを持っていると言われており、子供の頃にかかった記憶がない方でも知らないうちに水痘・帯状疱疹ウイルスを持っている人もいます。 

帯状疱疹の好発年齢 

帯状疱疹の患者数は年々増加傾向で男性より女性に多く、50代から急増して罹患(りかん)率は70代でピークとなります。 

患者数の増加は高齢化が原因かはわかっていませんが、高齢になるにつれて帯状疱疹にかかる確率は上がると言えます。 

国立感染症研究所:平成29年帯状疱疹ワクチン ファクトシートより

帯状疱疹の治療 

できるだけ早く治療を開始することが重要

帯状疱疹の治療には、できるだけ早くウイルスの増殖を抑えることが重要です。 
抗ウイルス薬による治療効果を得るためには、皮疹出現後3日(72時間)以内の早期投与が望ましいと言われています。 

原因不明の痛みが体の片側に起こり、そこに発疹(ほっしん)が見られたら帯状疱疹が疑われますので、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。 

薬物治療 

実際の治療ではウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」と痛みを抑える「鎮痛薬」が処方されます。 

基本的には飲み薬ですが、症状が重い場合や嚥下障害などで薬を飲むことができない場合には注射や点滴で治療することも。 

発疹の状態によってはぬり薬が処方されることもあります。 
ぬり薬には皮膚の症状や痛みを改善するほかに、水疱(すいほう)が破れウイルスが外に出て他の人に移らないように皮膚を保護する効果もあります。 

痛みが治まらない時には、薬の種類や量を調整してくれますので、我慢せずに医師に相談しましょう。 

また抗ウイルス薬は効果が出るまでに2~3日かかることがありますので、処方された薬はきちんと最後まで飲むことが重要です。 
症状が治まったからといって途中でやめてしまわないようにしましょう。 

他の人へうつさないために

帯状疱疹のウイルスは水ぼうそうと同じく他の人へ感染します。

水疱の中には水痘・帯状疱疹ウイルスが入っていますので、患部(発疹の出ているところ)は直接手で触らないように。
もしも触った時は必ず石鹸でしっかりと手を洗いましょう。

患部には処方された塗り薬をぬって、清潔なガーゼで覆うなどの処置をすると下着などで擦れて痛みが強くなったり、水疱が破れるのを防ぐことができます。

また病院を受診する時には必ず帯状疱疹にかかっていることを伝えましょう。

同時に帯状疱疹が治るまでは、免疫力のない新生児や高齢者にはできるだけ接触しないようにしてください。

帯状疱疹の後遺症 

帯状疱疹は神経の流れに沿って障害を及ぼすことから、様々な後遺症に悩まされる方もいます。 
例えば目や耳などの感覚器の神経が傷つくことで、視力低下や難聴などを引き起こします。 
また運動神経を傷つけることで、麻痺や排尿障害などの合併症の可能性も。 

そして最も多い後遺症は、発疹が良くなった後にもピリピリとした痛みが長期間続く帯状疱疹後神経痛(PHN)です。 

特に50歳以上の患者のうち、約2割の人が帯状疱疹後神経痛に移行すると言われています。 
これはウイルスが神経を傷つけることで起こり、帯状疱疹の痛みとは原因が異なるため治療法も変わります。 

皮膚症状が良くなっても痛みが続く場合には、医師に相談しましょう。 

帯状疱疹を予防するワクチン 

ワクチンの効果 

現在では水痘(すいとう)ワクチンを帯状疱疹のワクチンとして接種することで、発症率を低下させ、重症化を予防できると考えられています。 

ワクチンは病原性を弱くした「弱毒性ワクチン(生ワクチン)」と病原性をなくした「不活化ワクチン」が使用されます。 

帯状疱疹の発症予防効果を調査したところ、接種後3年間で発症が51.3%減少し帯状疱疹後神経痛が66.5%減少したという報告があります。 
ワクチン接種によって帯状疱疹を完全に予防することはできませんが、重症化や後遺症を防ぐ効果が期待できます。 

ワクチンの対象年齢 

帯状疱疹ワクチンの対象は50歳以上です。 

水ぼうそうにかかったことがある人はすでに水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫を獲得していますが、年齢とともに弱くなってしまうため改めてワクチン接種を行い、免疫を強化することで帯状疱疹を予防します。 

ワクチンの種類と注意点 

現在使用されている帯状疱疹のワクチンは「乾燥弱毒性水痘ワクチン(ビケン)」または「乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(シングリックス)」が使用されています。 

乾燥弱毒性水痘ワクチンは「生ワクチン」と言われ、免疫機能に異常のある疾患がある人や免疫抑制の治療を受けている人は接種できません。 

以下にそれぞれのワクチンの特徴とメリット・デメリットをまとめました。

乾燥弱毒性水痘ワクチン
「ビケン」(生ワクチン)
乾燥組換え帯状疱疹ワクチン
「シングリックス」(不活化ワクチン)
接種回数1回2回
(1回目から2か月あけて2回目を接種)
接種方法皮下注射筋肉注射
メリット・1回の接種で済む
・シングリックスより費用が安い
・免疫疾患や免疫抑制治療をしている人も接種できる
デメリット・免疫疾患や免疫抑制治療をしている人は接種不可
・生ワクチン接種後27日以上の間隔をあける必要あり
・ビケンに比べて費用が高い
・2回接種する必要がある

ワクチンの費用はいくらかかるのか 

帯状疱疹のワクチンは全額自費で接種すると1回あたり2万円~3万円程度かかります。 

ただし自治体によって予防接種費用の助成が受けられる場合があります(ただし対象年齢や助成額、回数などの要件はそれぞれ異なる)ので、お住まいの地域の行政や医療機関で確認しましょう。 

助成が受けられる地域では乾燥弱毒性水痘ワクチン(ビケン)で4,000円~5,000円ほど、乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(シングリックス)で1回10,000円程度の自己負担となるところが多いようです。 

帯状疱疹を予防するための生活習慣 

腸活で免疫力アップ

帯状疱疹の原因は免疫が低下することでウイルスが再び活動を始めることで起こります。 

特に高齢者では免疫力の低下によって様々な病気にかかりやすくなりますので、普段の生活習慣で予防することが大切です。 

食事や睡眠をしっかりと 

生活の基本は規則正しい生活を送ることです。 

食事の時間が不規則だったり、コンビニや惣菜ばかり食べていると栄養バランスが悪くなりがちです。 
決まった時間に食事を取るようにし、できる範囲で栄養バランスも考えて食べるように心がけましょう。 

高齢者では夜間トイレに起きて寝不足になりがちという方も多いですが、そもそも睡眠時間は若い人より少なくなっています。
こだわり過ぎずに、いつも通りの睡眠を取りましょう。

適度な運動とリラックスの時間を 

適度な運動はストレスを解消して、免疫力を上げることがわかっています。 
ウォーキングや体操など体を動かす時間を持つようにしましょう。 

高齢なために1人での運動が難しい場合には介護保険を利用したデイサービスやリハビリなどもあります。 
また適度な運動は質の良い睡眠にもつながります。 

他にもお風呂や好きな音楽を聴く、疲れたら休むなどリラックスできる時間も大切です。 
活動と休養のバランスを取って、免疫力の低下を予防しましょう。 

まとめ 

今回は帯状疱疹と予防方法についてお伝えしました。 

加齢に伴って免疫力が低下することで、帯状疱疹にかかる人が多くなります。

また高齢者では重症化や帯状疱疹後神経痛のリスクも。
これを機会に、予防接種や生活習慣で帯状疱疹を予防してはいかがでしょうか。 

参考資料 

国立感染症研究所 帯状疱疹ファクトシート (mhlw.go.jp) 

帯状疱疹大規模疫学調査「宮崎スタディ(1997-2017)」アップデート (niid.go.jp)