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高齢者の尿もれ~原因と治療・対策

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尿もれは高齢者だけでなく若い女性でも見られますが、その頻度は年齢とともに高くなってきます。 

尿もれが気になって外出したくなくなったり、夜中ゆっくり眠れなかったりすることも。 

今回は高齢者の尿もれの原因と予防や対策についてお伝えします。 

高齢者の尿もれの原因 

尿もれとは医療用語で「尿失禁」とも言われ、自分の意思とは関係なく尿がもれてしまうことです。 

P&Gジャパン株式会社が行った20代から60代の日本女性4万人を対象とした「尿もれ」に関する調査では60代以上の66.2%が尿もれの経験ありと答えています。 

女性の尿もれの原因は骨盤底筋の機能が低下することで起こります。 

これは加齢だけでなく妊娠や出産、運動不足、肥満なども原因となります。 

男性の場合には尿道括約筋の機能低下により、尿道内に尿が残るため、排尿後に少しずつ尿がたれてくるという事が起こります。 

関連資料 

日本女性 20代から60代 40,000人 に聞く、UI(尿もれ)実態大規模調査 | P&Gのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー (kyodonewsprwire.jp) 

尿もれのタイプ 

次に、尿もれのタイプについて説明します。 

尿もれのタイプには大きく分けて4つのタイプがあります。 

腹圧性尿失禁 

骨盤底筋が緩んでしまったり、尿道をぎゅっと締めつける尿道括約筋の力が弱くなって起こるものです。 

咳やくしゃみ、運動時などお腹に力がかった時に尿失禁がおこるタイプです。 

切迫性尿失禁 

突然尿がしたくなり、我慢できずに、もれてしまうタイプ 

原因は膀胱が勝手におしっこを出すように収縮してしまう膀胱障害で、異常な膀胱の収縮に伴って、突然もれそうな強い尿意を感じて間に合わず尿もれしてしまうタイプです。 

溢(いつ)流性尿失禁 

尿が上手く出ず、膀胱が尿でいっぱいになってちょろちょろともれ出してくるタイプです。 

ばい菌が入りやすく腎臓にも負担がかかかるので、薬物治療など何らかの治療が必要です。 

機能性尿失禁 

膀胱や尿道に異常はありませんが、歩行障害により移動するまでに時間がかかって間に合わなかったり、認知症のためにトイレを認識できず尿失禁してしまうタイプ。 

ちなみに女性に多いのは「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」です。 

尿もれの治療法 

腹圧性尿失禁の治療 

腹圧性尿失禁であれば、骨盤底筋を鍛えることで改善することがあります。 

あまり効果がない場合には、緩んでしまった尿道を固定する手術を行うことも。 
この手術では治癒率が高く、身体への侵襲も少ないというメリットがあります。 

切迫性尿失禁の治療 

切迫性尿失禁では薬物療法が有効になります。 

薬物治療に加えて、骨盤底筋の訓練や尿意を少し我慢する膀胱訓練を行うこともあります。 

溢(いつ)流性尿失禁の治療 

まずは尿が出ない原因となっている病気を治療します。 

排尿筋の機能が低下している場合には、膀胱内にカテーテル(管)を挿入して排尿させることで膀胱の減圧を図ります。 

治療をしても排尿筋が収縮しない場合には、自分で時間ごとに膀胱内にカテーテルを挿入して排尿したり、カテーテルを留置しておくという方法もあります。 

機能性尿失禁の治療 

機能性尿失禁の場合には、時間を決めてトイレへ誘導したり、自宅内でも動きやすいように手すりや歩行器を使ったり、近くにポータブルトイレを設置したり、本人がトイレへ行きやすい環境を作る必要があります。 

尿もれの予防と対策 

それでは尿もれの予防や対策についてみていきましょう。 

尿もれの種類によって対策が異なりますので、それぞれ合った方法で行ってみてください。 

骨盤底筋を鍛える 

骨盤底筋は女性で緩みやすい筋肉ですが、男性でも腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁の原因となることがあります。 

この筋肉を鍛えることで、尿もれの改善や予防することができます。 

<骨盤底筋体操> 

尿もれを予防していくための体操(骨盤底筋トレーニング)について説明します。 

  1. 仰向けで膝を曲げる、または立った姿勢で肩幅に両足を広げて立ちます(テーブルなどに手をついて行うと安定します)。 
  1. 肛門と膣をぎゅーと身体の中に絞り込むように締めます。 
  1. そのままの姿勢を保ち、力が緩まないように気をつけて5つ数えます。(5秒間ぐらい) 
  1. 5つ数え終わったら完全に力を抜いて5つ以上休みます。(5秒間休みます) 

「締めて...ゆるめて…」を8回繰り返し1セットとして、10分間繰り返し行います。 

この体操を毎日行います。 

尿もれ改善の効果が現れるまでには1ヶ月から3ヶ月かかりますので、諦めずに毎日続けることが大切です。 

膀胱訓練 

切迫性尿失禁の場合は尿が少ししか溜まっていないのに、トイレにいく習慣がついてしまって膀胱容量が小さくなったり、少ししか貯めることができなくなっています。 

膀胱は尿が溜まることで風船のように伸び縮みしていますが、加齢に伴い収縮も悪くなってきます。 

膀胱訓練では膀胱に尿を溜める訓練で、膀胱の機能を戻すために行いますが、尿を我慢することで膀胱炎になる可能性もありますので、必ず主治医の指示に従って行いましょう。 

  1. 尿意を感じてから5分程度とトイレに行くのを我慢します。 

毎回だと大変ですので、日中や回数を決めて行いましょう。 

  1. 5分我慢できるようになったら、10分、15分と我慢する時間を長くしていきます。 

排尿の間隔が2-3時間、3-4時間程度となれば成功です。 

トイレに行った回数や時間を記録すると、傾向がわかりますし、受診の時にも参考になります。 

尿もれを悪化させる生活習慣 

健康的な排尿は「トイレに行きたい」という感覚を確認してからトイレへ行き、膀胱が収縮して尿道が緩むことで起こります。 

ところが次のような排尿習慣があると、尿もれを悪化される傾向があると言われていますので注意が必要です。 

過剰な水分摂取やカフェインやアルコールの過剰摂取 

1日の水分摂取量はおおよそ1ℓ~2ℓを摂取することで十分と言われています。 

コーヒーやお茶などカフェインを含む飲み物やアルコールは利尿作用があるため、これらの過剰摂取は尿失禁の原因となりえるため注意が必要です。 

便秘でトイレでいきむ習慣がある 

便秘気味の人が毎日トイレでいきむ習慣があると、腹圧性尿失禁を悪化させ尿もれを起こしやすくなります。 

太りすぎ・肥満

太り過ぎは常に余分な腹圧がかかっている状態で、腹圧性尿失禁を悪化させたり、膀胱炎などの原因にもなる恐れがあります。 

肥満は生活習慣病など尿もれだけでなく様々な病気の原因になりますので、減量に取り組むことをおすすめします。 

尿とりパットの使用 

高齢であったとしても尿もれは精神的にもショックですし、恥ずかしいという思いがあります。 
まずは本人の気持ちを汲み取った上で、尿とりパットの使用をすすめてみましょう。 

女性だとナプキンで代用する方もいますが、吸収力や消臭などに違いがありますので、専用の尿とりパットがおすすめです。 

元気に外出されている高齢の方でも尿とりパットを使っている人は実は結構います。 
尿とりパットを使うことで安心感もありますので、初めは外出時だけでも使ってみると良いでしょう。 

トイレへ行きやすい環境を整える 

高齢になると下肢筋力が低下して、移動時にふらつきや転倒することも。 
そのために歩行がゆっくりとなり、トイレに間に合わないという場合もあります。 

まずはいつも過ごしているリビングや寝室からトイレまでの動線を再確認してみましょう。 
障害物をどけたり、必要に応じて手すりや歩行器を使う、段差の解消をすることでトイレまで安全に、早く移動できるようになるかもしれません。 

またどうしてもトイレまで間に合わないと言う場合には、ポータブルトイレを設置を検討してみましょう。 

例えば日中は時間ごとにトイレに誘導して、夜間だけ寝室にポータブルトイレを設置するなど生活に合わせて過ごしやすい環境を整えることが大切です。 

また自宅内の手すり設置やポータブルトイレの購入には介護保険を利用すれば、自己負担も少なく済みます。 

まとめ 

今回は尿もれの原因や治療、予防と対策についてお伝えしました。 

排泄の問題は本人の「恥ずかしい」という思いや「何となく聞きづらい」といった気持ちもあり、放置されがちです。 

高齢者にとって尿もれなどの排泄問題は、外出を制限してしまうことにもつながり閉じこもりの要因ともなります。 

これを機会に高齢者の尿もれについて知っていただき、適切な予防や治療、対策を行うことで元気に過ごしてもらいましょう!