なぜ高齢者に結核が多いのか~原因と症状・治療
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結核といえば咳をして血を吐くという昔の病気というイメージがありますが、結核は現代の病気でもあります。
国の取り組みによって死亡率は減少していますが、患者数は依然として多いのが現状です。
今回は高齢者に多い結核の症状や治療、予防方法などについてお伝えします。
結核とは
結核は結核菌による感染症で、咳や発熱などが主な症状です。
若年者に比べて高齢者に発症しやすいと言われています。
結核にかかる人は年々減少傾向ですが、平成11年には結核緊急事態宣言も出るなど過去の病気ではないことがわかります。
感染と発病の違い
結核には「感染」と「発病」で違いがあります。
感染とは、結核菌を吸い込み、肺の奥に定着することをいいます。
感染の段階では、結核菌を人にうつすことはありません。
一方、発病とは結核菌が体内で増殖し、病巣ができることをいいます。
発病してなおかつ結核菌を外に出している(排菌している)場合は他の人に感染させるので注意が必要です。
なぜ高齢者に結核が多いのか
高齢者は若い頃に結核がまん延していたため感染している人が多く、75歳以上では5割を超える人がすでに感染していると言われています。
通常は免疫の働きで結核菌の増殖が抑えられているために、感染しても8~9割の人は発病せずに一生を終えます。
ところが加齢に伴ってからだの抵抗力が衰えたり、病気の治療のために免疫力を抑えたりすると体の中で眠っていた結核菌が再び目覚めて活動を再開することがあります。
また糖尿病や人工透析、大きな手術などは結核を発病しやすい要因と言われています。
若者に感染する理由
高齢者では結核になっても、はっきりとした症状が出ないために受診が遅れることがあります。
若者が体調不良で病院を受診した結果、実は同居している高齢者が結核を発病していて、家族に感染していたということも。
今の若者は結核に感染したことがないために、不規則な生活などによって免疫力が低下していると感染して発病することがあるため注意が必要です。
また学校や職場などの集団に属していることが多いため、一人が感染して排菌すると一気に結核が広がる集団感染にもつながります。
結核の症状
結核は感染した場所によって呼び方が変わります。
肺に感染した場合は「肺結核」、背骨に感染すると「脊椎(せきつい)カリエス」、結核菌が血流にのって腎臓に発症すれば「腎結核」、腸であれば「腸結核」、全身にまわると「粟粒(ぞくりゅう)結核」と呼ばれます。
肺結核
肺結核の場合には咳や痰、発熱(微熱)など風邪のような症状がみられます。
風邪薬を飲んでも改善せず、2週間以上咳や痰が続くようなら早めに医療機関を受診しましょう。
結核が進行してくると、体重減少、寝汗をかく、息切れや血痰・喀血などがみられることもあります。
脊椎カリエス
脊椎カリエスでは脊椎に病変が生じるため、腰や背中の痛みが出ます。
他には一般的な結核の症状である、微熱や疲れやすさ、体重減少がみられることも。
進行すると脊椎がもろくなり、骨が破壊されて背骨が曲がったり、しびれや麻痺、排泄障害が起こる場合もあります。
腎結核
腎結核では初期に血尿がみられることもありますが、多くは特に自覚症状はありません。
やがて膀胱(ぼうこう)に移ると排尿痛や頻尿などの膀胱炎の症状が出ます。
さらに進行すると背部痛や倦怠感、易疲労感、微熱、体重減少、食欲不振、寝汗などがみられることもあります。
腸結核
腎結核などと同様に結核菌が腸に侵入して炎症を起こし、潰瘍を形成します。
腹痛や下痢、発熱、体重減少などがみられますが、症状があまりはっきりしない場合もあります。
粟粒(ぞくりゅう)結核
粟粒結核には急性型と慢性型があり、急性型では突然の発熱や頭痛がみられ、呼吸困難や昏睡(こんすい)になることがあります。
一方、慢性型ではほとんど無症状でレントゲン検査を受けて発見されることが多いですが、数ヶ月後に急性型に似た症状が出ることも。
結核の感染経路
結核は主に空気感染(発病した人の咳やくしゃみによって菌が空気中にただよい、それを吸い込むことで感染)です。
結核に感染した人の食器や衣服などから移ることはありませんので、使ったものを特別に消毒する必要はありません。
また感染したからといってすぐに発病するとは限らず、潜伏期間は2年以内、多くは6ヶ月以内ですが、時には感染から数10年経ってから発病することもあります。
結核の治療
次に結核の治療についてみていきましょう。
薬は数ヶ月にわたって服用する必要がありますが、初期治療に成功すれば半年から1年で治療を終了できます。
ところが、きちんと最後まで薬を飲まなかったりすると、菌が薬に対して耐性を持つようになり、治療が困難になります。
必ず最後まで治療を続けることが重要です。
また結核の治療には治療費の一部が公費により負担されますが、公費負担を受けるための手続きが必要です。
結核早期発見のための3つのチェックポイント
それでは結核を早期発見するためにチェックポイントについてお伝えします。
特に高齢者でははっきりとした症状が出ないことがありますので、日々の変化に気づくことが大切になります。
全体のようす
- なんとなく元気がない
- 活気がない
全体の印象としていつもより元気がなかったり、活気がないなどの様子がみられることがあります。
全身症状
- 37.5℃以上の発熱
- 体重の減少
- 食欲がない
- 全身の倦怠感がある
微熱や食欲がないなどの症状が2週間以上続いている場合は要注意です。
呼吸器系の症状
- 咳
- 痰(たん)、血痰(血の混ざった痰)
- 胸痛
- 呼吸困難、呼吸数の増加
肺結核では呼吸器に症状が出ます。
風邪薬を飲んでも治らない、2週間以上続く咳や痰には注意が必要です。
結核の診断方法
結核の診断には肺のレントゲン検査やCTを撮影します。
また排菌しているかどうかを調べるために喀痰検査を行います。
以前は喀痰の中に含まれる結核菌の量を「ガフキー号数」という数字で表していましたが、現在は1+~3+の簡便な記載法に変更になりました。
どちらも結核菌の量が多いほど、他者へ感染させるリスクが高いと言えます。
結核の予防方法
最後に結核の予防方法をお伝えします。
BCGワクチン接種
BCGは結核を予防するために接種するワクチンです。
厚労省によると、乳幼児期にBCGを接種することで、結核の発症を52~74%程度、重篤な髄膜炎や全身性の結核に関しては64~78%程度予防することができると報告されています。
また一度BCGワクチンを接種すれば10~15年程度効果が続くと考えられています。
参考資料
結核とBCGワクチンに関するQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
免疫力を低下させない
結核は免疫力が低下すると感染、発病しやすくなります。
免疫力を低下させないために、日頃から規則正しい生活と十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動を心がけましょう。
結核の早期発見が大切
結核が発病し、排菌すると他の人に移してしまう可能性があります。
できるだけ早期発見して確実に治療することが重要です。
そのためには以下の3つに注意しましょう。
まとめ
今回は高齢者に多い結核について、原因や症状、治療法などをお伝えしました。
結核は過去の病気ではありません。
特に高齢者では知らないうちに感染、発病していることがありますので、普段の様子の変化に注意しながら早期発見、治療につなげて感染が広がらないように気をつけていきましょう。